「何も起きないけれど、ずっと見ていたい」。そんな不思議な魅力を持つドラマが、エンタメ界の目の肥えたプロたちの間で大きな話題を呼びました。2025年11月からNHKの「夜ドラ」枠で放送された実写版ドラマ『ひらやすみ』です。
人気漫画の実写化といえば、賛否両論が巻き起こるのが常ですが、本作は視聴者からの評価が極めて高く、「心が救われた」「理想の実写化」との声がSNSに溢れました。
さらに、YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」の恒例企画「エンタメ発表会2025」(2025年12月27日公開)において、東野幸治さんと佐久間宣行プロデューサーが本作を激賞したことで、放送終了後もその熱が再燃しています。
なぜ、地味な平屋暮らしを描いた物語がこれほどまでに人の心を掴むのでしょうか。この記事では、ドラマ『ひらやすみ』のキャストのハマり具合から、涙なしには見られない最終回のネタバレ、そして業界のプロが唸ったポイントまでを徹底的に解説します。
なお、ノブロックTVの「エンタメ発表会2025」については、筆者 taoが運営する別ブログにて、内容をまとめた記事があります。ご利用ください。

- 実写ドラマ『ひらやすみ』の主要キャストと、原作再現度が高すぎると話題の配役の秘密
- 物語のあらすじから、感動の最終回「白いアジサイ」のエピソードまでのネタバレ解説
- ノブロックTVで東野幸治さんと佐久間Pが語った、本作を「激賞」する具体的な理由とプロの視点
『ひらやすみ』実写版|まず押さえる基本情報
実写ドラマを深く楽しむために、まずは原作漫画の背景やドラマの基礎情報、そしてなぜこの作品が「奇跡の実写化」と呼ばれたのか、その制作背景を整理しておきましょう。
原作漫画「ひらやすみ」とはどんな作品か
原作は、真造圭伍(しんぞう けいご)氏による同名漫画で、『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて2021年から連載されています。
物語の主人公は、29歳のフリーター・生田ヒロト。彼は定職も恋人もなく、将来の不安すら感じていないという、現代社会においては少し浮世離れした「お気楽な自由人」です。
そんなヒロトが、近所の偏屈な一人暮らしのおばあちゃん・和田はなえと仲良くなり、彼女からタダで平屋の一戸建てを譲り受けるところから物語は始まります。
そこへ、山形から美大進学のために上京してきた18歳の従姉妹・小林なつみが転がり込み、年の差のある二人暮らし(平屋モラトリアム)がスタートします。
この作品は、「マンガ大賞2022」で第3位、「ブロスコミックアワード2021」で大賞を受賞するなど、連載当初から高い評価を受けてきました。
さらに2024年にはイタリアの「ルッカコミックス&ゲームズ」で最優秀連載コミック賞を受賞するなど、その普遍的な日常の温かさは海外でも評価されています。
実写ドラマの基礎情報
実写ドラマ版は、NHK総合の「夜ドラ」枠(月〜木曜 22:45〜23:00)にて、2025年11月3日から12月4日まで全20回で放送されました。
1話15分という短い尺の中で、平屋に流れるゆったりとした時間を丁寧に切り取っているのが特徴です。
脚本を担当したのは、アニメ『スキップとローファー』などを手掛けた米内山陽子氏です。
彼女自身、かつて阿佐ヶ谷の狭いアパートで暮らしていた経験があり、原作漫画を読んで「自分の過去が肯定された」と感じたという強い思い入れを持って脚本執筆に臨みました。
演出は『団地のふたり』などの松本佳奈氏らが務め、音楽は富貴晴美氏が担当しています。
実写化の背景と制作陣の特徴
このドラマが成功した大きな要因の一つに、徹底した「リアリティ」へのこだわりがあります。
物語の舞台となる平屋はセットではなく、千葉県にある実在の民家を探し出して撮影されました。
制作陣は関東近郊で300軒以上の候補をリストアップし、実際に60軒を回って、原作のイメージに合う庭や木があるこの物件にたどり着いたといいます。
また、舞台となる杉並区阿佐ヶ谷の風景も重要なキャストの一部です。
「阿佐谷パールセンター商店街」や釣り堀「寿々木園」、ヒロトたちが歩く「天沼陸橋」など、実在する場所でロケが行われ、街の空気感そのものが映像に封じ込められています。
特に第10回で登場する「阿佐谷七夕まつり」のシーンは、商店街の協力のもと、祭りの飾り付け直後の深夜に撮影を敢行し、本物の祭りの高揚感を映像化することに成功しました。
放送と話題になった理由
本作は放送開始直後から、SNSを中心に「キャスティングが完璧すぎる」「何も起きないけどなんかいい」と話題になりました。
派手なサスペンスや考察ドラマが流行する中で、ただ美味しいご飯を食べ、日々の小さな悩みに寄り添うこのドラマは、視聴者にとっての「心の避難所」となったのです。
放送終了後も「ひらやすみロス」を訴える声が多く、異例の速さで2026年正月の「一挙再放送」が決定しました。
ドラマ・映画のレビューサイト・Filmarksでは、4.5点(5点満点)という驚異の評価を得ています。
配信情報と再放送!
12月4日で最終回放送が終わったドラマ『ひらやすみ』。「ひらやすみロス」の人たちが多いとのこと。ご安心ください。現在、いくつかのVOD(ドラマ・映画配信サービス)で見放題作品として配信されています。
- NHKオンデマンド
- NHKのドラマなので、NHKオンデマンドで全話見放題配信中
- Amazonプライムビデオ
- 最近、NHK大河ドラマの数作品がAmazonプライムビデオでも見放題で配信されるようになってきました。そんな連携の流れでしょうか、『ひらやすみ』はAmazonで見放題配信中です!
次に、これは【特報】です。
NHKには再放送に希望がたくさん届いている様子。そこで次の日程で、NHKの再放送が決定しました。
- 1月1日(木・祝) 夜11:25~翌午前2:27<第1回-第12回>
- 1月3日(土) 午前0:10~2:11<第13回-第20回>※2日深夜
なお、1月3日(土) 午前2:11からは、NHK ONE(新NHKプラス)で、全話配信が予定されています。
『ひらやすみ』実写版の キャスト|主要キャストと配役を徹底解説
本作の評価を決定づけたのは、原作ファンも唸るキャスト陣のハマり役ぶりです。
ここでは、主要キャラクターの配役と、彼らが織りなす関係性の魅力について解説します。
主人公ヒロト役は誰?原作再現度と演技評価
主人公の生田ヒロトを演じたのは、実力派俳優の 岡山天音さんです。
実はこのキャスティングには、運命的な背景があります。原作者の真造圭伍氏が『ひらやすみ』を描き始める際、 ヒロトのキャラクター造形の参考にするために取材した相手が、なんと岡山天音さん本人だった のです。
つまり、ヒロトというキャラクターにはもともと岡山さんの要素が含まれており、彼が演じることは必然とも言える配役でした。
岡山さん自身も原作のファンであり、オファーを受ける前から愛読していたそうです。劇中での彼は、力の抜けた佇まいや独特の間合いで「そこにいるだけで周りを和ませる」ヒロトを完璧に体現し、「演技に見えない」「ヒロトそのもの」と絶賛されました。
ヒロイン・周辺キャラクターの配役と役割
ヒロトと同居する従姉妹・小林なつみを演じたのは 森七菜さんです。
彼女もまた原作のファンであり、地方から上京してきた美大生という役柄を、等身大の演技で瑞々しく表現しました。
生意気だけど寂しがり屋で、夢と現実に揺れるなつみの複雑な感情を、森さんは「不機嫌な顔」や「子供のような無邪気さ」の使い分けで見事に演じています。
ヒロトの親友・野口ヒデキ役には 吉村界人さんが抜擢されました。
オーディションには岡山天音さんも参加して相性を確認したという徹底ぶりで、吉村さんはヒデキの持つ「愛すべきダメさ」と「人間味」を見事に表現しています。
また、なつみの親友となる横山あかり役の 光嶌なづなさんもオーディションで選ばれ、関西出身ながら完璧な博多弁をマスターして役になりきりました。
さらに、不動産会社で働くバリキャリ女性・立花よもぎ役には 吉岡里帆さん、ヒロトに平屋を譲るおばあちゃん・和田はなえ役には 根岸季衣さん、そしてナレーションには 小林聡美さんと、盤石の布陣が脇を固めています。
キャスト同士が生み出す独特な空気感と関係性
このドラマの魅力は、登場人物たちの「距離感」にあります。
ヒロトとなつみは従兄妹ですが、親子でも恋人でもない、ゆるやかな同居人としての関係性を築いていきます。
岡山天音さんと森七菜さんの掛け合いは、アドリブかと思わせるほど自然で、二人がちゃぶ台を囲んでご飯を食べるシーンからは、本当の家族のような生活音が聞こえてくるようです。
また、ヒロト、なつみ、ヒデキ、あかり、よもぎといった面々が平屋の縁側に集まり、ただダラダラと過ごすシーンは、視聴者に「自分もこの輪に入りたい」と思わせるような温かい一体感を生み出しています。
『ひらやすみ』実写版のネタバレ|あらすじを結末まで解説
ここからは、全20回の放送で描かれた物語の流れと、感動的な最終回の内容をネタバレ込みで紹介します。
前半:日常の積み重ねが描く物語の土台
物語は、ヒロト(岡山天音)が近所の偏屈なおばあちゃん・はなえ(根岸季衣)と仲良くなり、平屋を譲り受けるエピソードから始まります。
そこへ山形からなつみ(森七菜)が上京してきますが、彼女は東京の生活に馴染めず、大学でも友達ができずに孤立していました。
ヒロトはそんななつみに過干渉することなく、美味しいご飯を作って見守ります。
フードスタイリスト・飯島奈美氏が監修した料理(カツカレー、肉野菜炒め、目玉焼きトーストなど)は、彼らの生活を彩る重要な要素です。
やがてなつみは、大学で博多弁を話すあかりという友人ができ、少しずつ笑顔を取り戻していきます。
一方、不動産屋のよもぎ(吉岡里帆)は仕事のストレスを抱えていましたが、ヒロトと出会い、彼のマイペースな生き方に触れることで、張り詰めていた心が解きほぐされていきます。
中盤:評価が一気に高まった転換点
物語の中盤、平屋の元持ち主であるはなえ(根岸季衣)が急逝するという悲しい出来事が起こります。
ヒロト(岡山天音)は深い喪失感を抱きますが、周囲の人々に支えられながら、ばーちゃんから託された平屋での生活を守っていこうと決意します。
また、ヒロトの親友・ヒデキ(吉村界人)が育児と仕事のプレッシャーで精神的に追い詰められるエピソードも描かれました。
限界を迎えたヒデキに対し、ヒロトが「頑張らなくていいんだよ」と寄り添い、彼のスマホを釣り堀に投げ捨てるシーンは、多くの視聴者の涙を誘いました。
なつみ(森七菜)もまた、漫画家になりたいという夢に向かって動き出します。
編集者の二階堂(駿河太郎)に才能を認められつつも、創作の苦しみや周囲との比較に葛藤する姿がリアルに描かれました。
最終回:結末と余韻、視聴者が受け取ったメッセージ
最終回(第20回)では、原作者・真造圭伍氏からのリクエストでもあったという、原作第1巻の重要なエピソード「白いアジサイ」が描かれました。
山形から届いた里芋で「芋煮会」を開くことになったヒロト(岡山天音)たち。
準備の最中、ヒロトははなえ(根岸季衣)が大切に保管していた箱を見つけます。
中には、かつて入院中のはなえにヒロトがお見舞いとして贈った「白いアジサイ」の押し花が入っていました。
回想シーンでは、その花を受け取ったはなえが「あんたは優しすぎる。いつか絶対だまされる。わたしゃ、あんたが心配だよ」と涙し、この優しい青年に平屋を託そうと決意した瞬間が明かされます。
ヒロトの何気ない優しさが、孤独だったはなえの心を救っていたことが判明する感動的なクライマックスでした。
ラストシーンでは、ヒロト、なつみ(森七菜)、ヒデキ(吉村界人)、あかり(光嶌なづな)、よもぎ(吉岡里帆)たちが縁側で芋煮を囲み、笑顔で語り合います。
劇的な事件や明確な「終わり」はなく、これからも彼らの日常が続いていくことを予感させる温かい余韻の中で、ドラマは幕を閉じました。
ノブロックTVで話題|東野幸治・佐久間Pが激賞した理由

このドラマが一部のドラマファンだけでなく、お笑いやバラエティ好きの層にまで広がったきっかけの一つが、YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」での紹介です。
2025年12月27日に公開された動画で、東野幸治さんと佐久間宣行プロデューサーが本作を大絶賛しました。
番組内で語られた具体的コメントまとめ
東野幸治さんは、動画内で「死ぬ気で見ました」と前置きした上で、『ひらやすみ』について熱弁を振るいました。
- 東野幸治さん:
- 「森七菜がえぐいんすよ。マジで。国宝(映画)の時の演技と全然違う。どうやって体に入れ込んだのか」「年末年始に見るなら最高。酒飲みながら見てください」
- 佐久間宣行P:
- 「最高です。僕もおすすめ」「実はプロデューサーの坂部さんは、僕の高校時代のバイト先の先輩なんです」
特に東野さんは、今年見たコンテンツの中でもトップクラスの評価(98点レベル)を与えており、その熱量の高さが視聴者の関心を引きました。
プロ視点で評価された演出・脚本・キャスト演技
二人が特に評価したのは、やはり 「自然体」の演技と演出 です。
東野さんは、森七菜さんが演じるなつみの「ジャージでダラダラして、文句を言いながら飯を食う」姿や、自己紹介でスベるシーンなどのリアリティに驚愕していました。
映画『国宝』で森七菜さんが見せた重厚な演技とは全く異なる、力の抜けた自然な芝居ができる彼女の振り幅(レンジ)の広さを「えぐい」と表現しています。
また、岡山天音さんとのコンビネーションについても「どこまでが演出なのかわからない」と語り、作り物めいていない空気感を高く評価しました。
佐久間Pも、ストーリーに大きな起伏がなくても見続けられる作品の質を保証しています。
なぜ「ひらやすみ実写版」は心に残る作品なのか
東野さんと佐久間Pの会話からは、このドラマが現代の視聴者が求めている「癒し」や「肯定」を提供していることが伝わってきます。
社会的な成功や競争から距離を置いたヒロトの生き方や、完璧ではない登場人物たちが支え合う姿は、疲れた心に染み渡ります。
脚本家の米内山陽子氏が「生きていくことへの肯定にあふれた作品」と語るように、このドラマは視聴者に対して「そのままでいいんだよ」と優しく語りかけてくれるような力を持っているのです。
それが、目の肥えた業界人たちをも虜にした理由と言えるでしょう。
実写版ドラマ『ひらやすみ』に関するFAQ
ここでは、ドラマ『ひらやすみ』に関するよくある疑問に答えます。
- Q1. 再放送の予定はありますか?
- A1. はい、好評につき2026年1月1日(第1回〜第12回)と1月3日(第13回〜第20回)にNHK総合で一挙再放送が行われる予定です(※放送時間は地域により異なる場合があります)。
- Q2. 見逃し配信はどこで見られますか?
- A2. NHKオンデマンドやAmazonプライムビデオで全話見逃し配信中です。また、NHK ONE(新NHKプラス)でも、1月3日以降に配信予定です。
- Q3. ドラマの続編(シーズン2)はありますか?
- A3. 現時点で公式発表はありませんが、最終回の放送後、SNSでは続編を望む声が殺到しています。制作統括の坂部氏は「何も決まっていないが、自分自身ももっと見たいと願っている」とコメントしています。
- Q4. ロケ地となった平屋はどこにありますか?
- A4. 物語の舞台は阿佐ヶ谷ですが、撮影に使われた平屋は千葉県佐倉市の民家(スタジオ)です。
- Q5. ドラマに登場する料理のレシピは分かりますか?
- A5. 料理監修は飯島奈美さんが担当しています。公式SNSなどで一部メニューが紹介されており、原作の再現度の高さも話題になりました。
- Q6. 原作漫画は完結していますか?
- A6. いいえ、2025年12月現在も『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中です。単行本は第9巻まで発売されています。
- Q7. アニメ化の予定はありますか?
- A7. はい、アニメ化も発表されており、制作は「Production +h.」が担当します。放送時期などの詳細は未定です。
- Q8. ドラマの主題歌は誰が歌っていますか?
- A8. 特定の主題歌はなく、劇伴音楽を富貴晴美さんが担当しています。また、劇中歌として岡山天音さんと森七菜さんが歌う「Keep on rolling」が流れました。
- Q9. 阿佐ヶ谷姉妹はどの回に出演していますか?
- A9. 第12回に、本人役としてカメオ出演しています。
- Q10. ヒロトが着ている衣装のブランドは?
- A10. ヒロトの衣装は古着やリラックス感のあるアイテムが中心です。具体的なブランドは公表されていませんが、阿佐ヶ谷や高円寺の古着文化を反映したスタイリングになっています。
- Q11. ドラマと原作で大きな違いはありますか?
- A11. 基本的なストーリーは忠実ですが、小林聡美さんによるナレーションが追加されていたり、細かなエピソードの順序や演出(よもぎのアドリブなど)にドラマ独自のアレンジが加えられています。
まとめ
実写ドラマ『ひらやすみ』は、原作への深いリスペクトと、キャスト・スタッフの丁寧な仕事が見事に融合した稀有な作品です。
派手な展開に頼らず、日常の愛おしさを描くことで、多くの視聴者の心を救いました。
ノブロックTVで東野幸治さんや佐久間Pが激賞したように、そのクオリティは折り紙付きです。年末年始の再放送や配信で、ぜひ阿佐ヶ谷の平屋に流れる穏やかな時間に浸ってみてください。
見終わった後、きっと「明日もなんとなく生きてみようかな」と思えるはずです。
- 実写版は原作者がモデルにした岡山天音と、憑依的な演技の森七菜という奇跡のキャスティングが成功の鍵
- 最終回は原作の「白いアジサイ」のエピソードを見事に回収し、続く日常への希望を描いた名作
- 東野幸治や佐久間Pも絶賛するように、派手な展開がなくても心に残る、現代人に必要な「休息」のようなドラマ


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